【9】2次データを読み込む

コンビニエンスストア24時間営業の背景にあるもの

2019年は、サブスクリプションの進展やパーソナライズといったマーケティグ手法や、キャッシュレス化の進展や働き方改革などの社会現象など、いろいろな業界や分野で様々な話題がありました。

なかでも私が注目しているのは、コンビニエンスストア24時間営業を巡るチェーン本部と加盟店との攻防についてです。

この問題は単にその是非だけでなく日本企業を巡る中長期的な環境変化に対する適応策を考える上で非常に興味深いものだからです。



まずは加盟店が24時間営業を負担に感じている要因を挙げてみました。

1.深夜時間来店客の減少による売上の減少
①来店客の高齢化
②外出率の減少

2.アルバイト時給の高騰と人手不足
③アルバイト時給の高騰
④アルバイト有効求人倍率の上昇

なぜ加盟店が24時間営業に対してやめたいかということをキャッシュインが減少し、キャッシュアウトが増加したという単純な収支の面から考えてみました。

来店客が高齢化したので、深夜の顧客が減少し、24時間営業する価値が少なくなったということと、人件費が高騰したことによって経費が増加した、結果として24時間営業による収益が減少したのではないかということです。

①来店客が高齢化することによって深夜に来店することが少なくなった、ということです。コンビニエンスストアの年代別来店客については、最大手のセブンアンドアイの事業報告書に時系列のデータが掲載されています。




これをみると明らかです。1989年当時は顧客の6割以上が10代と20代で占めていました。89年というとバブル最盛期でリゲインの「24時間戦えますか~♪」が流行した頃です。深夜でも街中が明るい時代です。そこから約30年たった2017年、当時10代20代だった人々は現在40代50代です。コンビニエンスストア利用年代の中心となっています。40代以上で6割を超えています。

つぎに②外出率の減少についてデータを収集してみました。国交省の「全国都市交通特性調査」によると確かに平日、休日ともに、ほぼすべての年代で外出率が減少しています。特に休日の外出率は50代まで二桁以上の減少となっています。



全国都市交通特性調査では、時間帯別の外出率までないので、e-Statで社会生活基本調査を使って、年代別時間帯別の「買い物」行為者の割合を集計してみました。


「買い物」行為者となるとコンビニ以外の店舗も含まれますが、深夜営業している小売業となるとコンビニの他はドン・キホーテなどごく僅かであると考えられますので、このデータを使ってどの程度の需要があるのか測ってみたいと思います。

データをみると、23時までは結構、行動者率があります。特に20代は約0.2%ですから1000人に2人という割合です。コンビニ利用の高い40代(0.14%)50代(0.11%)と高率です。

それが0時以降は極端に減少することがわかります。午前4時までに0.03%を超える年代はありません。1万人に3人ということですから非常に低率であることが分かります。

最後に③アルバイト時給の高騰と④アルバイト有効求人倍率の上昇については、データを重ね合わせてみました。




平均受給については、JBRCコンビニスタッフの平均時給(3大都市圏)から8年分のデータを収集しました。有効求人倍率は、パートの推移を収集しました。

これをみると時給は7年前より100円以上増加しているのが分かります。更に有効求人倍率も0.8ポイント以上上昇していますので、採用が困難になっていることが確認できます。

アルバイト人件費は粗利算出後に費用計上されますので、100%加盟店負担となります。(本部のロイヤルティは粗利に一定割合を乗じて支払われます)
さらに採用困難となると加盟店の経営者が深夜シフトに入ることも容易に想定できます。
このようにデータからみても加盟店経営者にとって24時間営業は、大きな経済的、労務的負担となっていることが分かります。


これらのから深夜時間帯の収入の減少額に加えて支出の増加額もあり、かつアルバイト募集活動という工数もかかっている24時間営業は、ビジネスモデルとして現代社会にはマッチしていないと考えられます。

需要のある所(エリア、時間帯)へ経営資源を集中するのは経済原理にかなっています。

もちろん経済原理だけでなく、24時間営業がなくなると防犯や災害時の社会的要素としての必要性もありますが、本当にそのような施設が必要であれば、それは公共的な対応が必要と思います。

少なくとも中小加盟店が担うべき使命としては、あまりにも大きな負担と考えます。
一方で業界関係者によると24時間営業を止めると売上高が3割程度減少するという定説もあるようです。24時間営業は、深夜時間帯の売上高実額だけでなく昼間の営業にも影響が大きいということです。

いつでも開いているという心理的な安心感が当該コンビニの利用率を高めると言われています。加えて深夜営業していないことによって商品の入荷や品出し業務が朝方にづれ込むことによって、朝の時間帯の販売効率が悪化していることも要因として考えられます。

このようにデータから考察してみると、この問題は単に営業機会としてだけでなくオペレーションも含めたコンビニエンスストアのビジネスモデル全体を検討しなくてはいけないテーマです。
その意味でセブンアンドアイ本部が加盟店のロイヤルティを低減するなどの処置は妥当だと思います。(加盟店にとってインパクトは大きくないようですが)
無人店舗や物流改革などを含めて考えていくべき、大きな問題です。来年以降のコンビニ業界の取り組みに注目していきたいと思います。

執筆者:蛭川 速 / 2019.11.14