【2】ヒット商品の状況仮説を考える

サブスクリプションについて考える!【後編】

すこし時間が経ってしまいましたが、後編です。


4. サブスクリプション浸透の背景

音楽配信からアパレル商品、ビールまでサブスクリプションの範囲は広がっています。これだけ話題になっている背景には、どのような環境変化要因があるでしょうか?

まず思いつくのは、ミニマリストや断捨離という所有意識の変化が考えられます。物質的なモノを所有することを避け必要最低限のモノで生活をしていこうという生活意識の変化です。コンビニエンスストアの店舗数は増加し、24時間365日営業していますし、amazonで購入すれば最短でその日の内に商品が届けられます。購買環境の変化によってストックするという意識が薄れ、それが利用する意識へ転換していったのではないかと考えます。


こうした意識は若い世代、とりわけミレニアル世代(2000年以降に成人となった、一般的に1981~1996年生まれの世代)が消費の中心になってきたことが影響しています。ミレニアル世代はインターネット環境が整備された頃に育った最初の世代です。パソコンよりもタブレットやスマホを使いこなし、インターネット通販の利用も当然のように行います。

そして私が着目しているのはレコメンデーションです。モノからコトへ生活者の関心が移行しているのは、物欲から、商品やサービスを利用することで得られる楽しみや心地よさを求める気持ちの変化が大きいと考えます。より本質的と言うか合理的な考えです。この心地よさには購買利便性も含まれます。

モノ余り時代には、購買疲れや、選ぶこと自体が面倒という意識もあります。散々選んだ挙句思った以上の効果が得られなかった時の喪失感もあります。アパレルやバッグのサブスクリプションサービスであれば好みの商品を提案してくれます。音楽配信や動画配信サービスでは「あなたへのお勧め」、レコメンデーションしてくれます。誰かが教えてくれる、導いてくれるというレコメンデーションが重要な要因となっているのです。

買い切りの方が累計購買金額としては、結果として安価なことが多いので、サブスクリプションの事業者は、それを上回る価値提供としての提案力が求められます。あの会社であれば間違いない、品質の高い商品を品揃えしているだけでなく、お勧めも確かだ、このような付加価値を訴求できるか否かがサブスクリプションの成否を分けると考えます。


5. 企業側としてサブスクリプションのメリット

サブスクリプションの事業会社のメリットとしては、ますは利益が平準化できることが挙げられます。定額利用金額と契約者数から収益が試算できます。固定収入の安定化に繋がるということです。確かな収益が計算できることはキャッシュフロー経営の観点からも大きなメリットと言えます。

2番目は、新しい顧客の獲得ができるということで、購入するとなると高くて手が出ない顧客を獲得できることです。パナソニックは高額テレビのサブスクリプション事業をすると報道がありました。顧客層を広げるという効果もあるようです。テレビや家電製品などは必需品ですからブランドロイヤリティが確立していれば、サブスクリプションモデルの方が合理的で適切かもしれません。5年~10年で買い替えるよりも一定周期で最新機器が利用できる方が、高い利便性を提供できます。

このようにいろいろな効果がサブスクリプションにはありますが、私が最も大きなメリットとして挙げるのは、スイッチング障壁の構築です。マイクロソフトは、アプリケーションソフト「オフィス」の提供方法として、買い切りからサブスクリプションモデル「オフィス365」に注力しています。「オフィス365」は特に法人需要が大きく、スケジュール管理やファイル管理機能など高度なグループウエア利用ができるプロダクティビィ機能を搭載しています。これら法人で必須となった機能を使うことで、コモディティ化しつつあるビジネスソフトにおいて他社(Googleやアップル)へ流出しないような障壁を築くことができるのです。



6. 利用者拡大の条件

サブスクリプションモデルが浸透するには、3つの条件があります。

一つめは、大量消費や利用頻度の高い商品やサービスに着目することです。音楽配信や動画配信では日常的に視聴している生活者を対象としています。必ず必要なサービスであるから定期購買するメリットがあるのです。その意味でユニクロのアンダーウエアはサブスクリプションモデルがマッチするのではないかと考えます。成人であればサイズが大きく変わることがありませんし、夏物と冬物で求める機能が異なります。1シーズン毎に最新機能のセットが定期的に届けられれば衣替えの手間もなくなります。都度最新でなくても構わない人のために安価コースも用意したら良いのではないでしょうか。

二つ目は、ロイヤルティの高い顧客が存在することです。ブランドの熱烈なファンです。キリン「ホームタップ」は一番搾りのファンが支えています。そのブランドが好きで他へスイッチしない信頼関係が構築されている場合にサブスクリプションモデルは有効となります。高級レストランも同様で、大事な人との時間を過ごす価値を感じているからこそ契約が増えるのです。前述の家電製品もブランドロイヤリティが醸成されていれば継続的なビジネスとして定着すると思います。高級カメラやビデオカメラでも当てはまるのではないかと考えます。

最後が既存の商品やサービスを購買利用時に工数がかかっていることです。レコメンデーションは購買時の選択の工数削減をしています。自動車のサブスクリプションモデルNOREL(ガリバー)などは、税金や保険料、車検などの維持費なしで乗ることができます。コスト面だけでなく車検や税金支払いなどはユーザーが負担している大きな手間です。例えばスマホやパソコンも自分仕様にアプリを入れ、データを保存していますが、買い替え時のデータ移行には煩わしいものがあります。サブスクリプションモデルで3年に1度最新機器と取り換えできるのであれば利用したいと考えるユーザーは多いと思います。


以上で本コラムは終了となります。サブスクリプションは2018年のキーワードとして大きな話題になりましたが、一過性のものではなく今後のビジネス環境においてスタンダードになり得るモデルであると考えます。

執筆者:蛭川 速 / 2018.12.28